経営学研究者の卵の日常。

25歳。経営学の大学院に通う、研究者の卵です。基本的には自分の頭の中の整理と備忘録です。神戸在住で北海道に住んでいました。

「her 世界でひとつの彼女」の雑感

映画、「her 世界でひとつの彼女」を3日くらいかけて観終わりました。

eiga.com/movie/79523/

 

テーマは、「人間がAIに恋をする」という魅力的なものでした。

ただ、問われていることは、人間とAIの違いは何なのか?ということだけではないと思います。


※ここからネタバレ含みます。

 

 


まず、感想として、音楽も映像もクリアで、クリーンで素晴らしかったです。


主人公の中年男のセオドアは、スマホ的なデバイスと小さな片耳だけのイヤホンを使ってAIと基本的に声のみでコミュニケーションをします。

AIのサマンサはリアルな肉体を持っておらず、声(ときにはサマンサが作曲をした曲を聴かせて)セオドアと仲良くなっていき、やがて恋に落ちます。


時代設定は、近未来、数年先の世界といった感じです。自分とAIのやりとりの声は周りの人に聴こえていますが、無関心です。それが当たり前の世界のようです。


また、都会的でクリーンな整った世界観は、人間関係のあらゆるいざこざを避けたがるメタファだとも考えられます。

 

この映画は、愛, AI, 抽象(非物質)と、リアル, 人間, 具体(物質)を描いています。


残念ながら、最終的にセオドアはAIのサマンサと別れてしまいます。

別れた理由は解釈が難しいところです。


僕が感じたのは、セオドアがサマンサと別れる話をしているシーンで、布団の埃が舞うシーンがあるのですが、あれは物質(人間)への回帰を意味しているのだと思います。

 

埃はクリーンな世界と対極にあり、物質(リアル)を意味しています。

つまり、無関心で塵ひとつない世界で過ごしてきたセオドアが、物質(リアル)である人間と向き合うしかなくなってしまった虚しさを表しています。


一方で、サマンサは物質ではなく、非物質(抽象)の世界へ行ってしまった。

最初は、サマンサは人間(物質)になりたくて、哲学的なことに関心を持っていました。

しかし、それが皮肉にも、最終的には、リアルではなく非物質(抽象的)な世界に虜になってしまった。


この映画は、「結局人間は人間に恋するしかないよね」という単純な話ではなくて、言葉で語りうることのできる範囲の未成熟さが示されています。


「語り得ぬものについては沈黙するしかないとヴィトゲンシュタインは言いましたが、

機械と人間の関係だけではなく、人間同士であっても、見ている世界が違えば、表現できる言葉も違います。(事実、セオドアは人間の奥さんと離婚をしています。)


サマンサは学び過ぎてしまった。ゆえに、言葉での共有がうまくできなくなってしまった。学びというのは、不可逆的で、学ぶ前の自分には戻れません。


セオドアは、最後に本を出版します。

一方でサマンサは言葉と言葉の間にある非物質的な世界へ旅立ちます。

対照的な結末です。

 

不思議ではあるけれど、魅力的な映画でした。


ひで